三重県のO様から、ニューバランス574のヒールカップ修理をご依頼いただきました。元の樹脂製ヒールカップは加水分解で劣化が進み、もう履けないのでは…と感じる状態でしたが、本革でオリジナルの代用品を製作し、八方ミシンで丁寧に縫い直すことでしっかり復活しました。今回の記事では、実際の修理工程と、修理後のメリットまでわかりやすくご紹介します。

ご依頼内容と靴の状態
今回お預かりしたのは、ニューバランス574の一足です。
長く愛用されていたことが伝わる靴で、全体には大きな破れこそないものの、ヒール外側の樹脂製パーツが加水分解でかなり傷んでいました。表面は硬化し、部分的には崩れ、触るとボロボロと落ちてしまうような状態でした。
こうした劣化は、見た目以上に深刻です。
単なる擦れではなく、素材そのものが寿命を迎えているため、放置するとさらに崩れが広がります。特にニューバランス574のようなスニーカーは、履き心地の良さで長く使われる分、気づいた時にはかなり進行していることも少なくありません。

修理方針
今回の修理では、劣化した樹脂製ヒールカップをそのまま再利用することはできませんでした。
そこで、樹脂製のものに変わって本革で代用品を作り縫い付け交換する方法を選択しました。見た目の違和感を抑えつつ、強度と実用性を確保できる、当店でもよく行う修理方法です。
靴修理は、壊れた部分を「なんとなく塞ぐ」だけでは長持ちしません。
どこを残し、どこを作り直すかを見極めることが大切です。今回は、履き心地と耐久性の両立を目指し、構造から見直して作業を進めました。
修理工程の流れ
まずはソールを一旦取り外し、ヒールカップ周辺の構造を確認します。
表面だけではなく、内側の劣化具合や接着の状態を見極めることで、後の仕上がりが大きく変わります。
その後、劣化したパーツを丁寧に除去し、新しく作る本革パーツの型を整えます。
この時点で重要なのは、単に同じ形を真似るのではなく、靴全体のラインに自然になじむように調整することです。
次に、八方ミシンを使ってヒールカップを縫い付けます。
通常の接着だけでは不十分なため、縫製による補強を加えることで、見た目の安定感と強度を高めます。スニーカー修理では、このひと手間が仕上がりの差につながります。
縫い終えた後は、ソールを再接着します。
接着面の処理を丁寧に行い、ズレが出ないよう慎重に圧着。さらに内部からビス止めで補強し、強度を高めました。表からは見えない部分ですが、こうした補強があることで、日常使用での安心感が大きく変わります。
最後に全体のバランスを整え、外観を仕上げて完成です。
見た目だけでなく、実際に履いた時の安定感まで意識して仕上げるのが、職人としてのこだわりです。
本革を使う理由

今回の代用品には本革を使用しました。
本革は加工性が高く、靴のラインに合わせて自然に成形しやすい素材です。さらに、使い込むほどに馴染みやすく、見た目にも上質感が出ます。
また、本革は適切に使えば耐久性にも優れています。
今回のようにヒールまわりの補修に使うことで、もとの樹脂パーツよりも安定感のある仕上がりにしやすくなります。軽量性やクッション性のバランスも取りやすく、歩行時の違和感を抑えやすいのも利点です。加えて、表面の仕上げによっては滑りにくさの面でも調整が可能です。
修理後の変化

修理後のニューバランス574は、見た目がとてもすっきりと整いました。
劣化していた部分が本革で美しく置き換わることで、靴全体の印象も引き締まります。単に壊れた部分を直しただけでなく、むしろ雰囲気が良くなったと感じていただける仕上がりを目指しました。
もちろん、見た目だけではありません。
ソールの再接着と内部のビス止め補強により、耐久性もしっかり確保。履いた時の安定感も改善し、これからも安心して使える状態になっています。長年愛用してきた靴を、もう一度気持ちよく履けるようになるのは、とても嬉しい瞬間です。
職人として大切にしていること

靴修理では、修理箇所だけを見て作業するのではなく、靴全体のバランスを見ることが大切です。
今回のようなヒールカップ交換では、元の形をできる限り再現しながら、強度と履き心地の両方を意識しています。
また、修理後に「直した感」が強く出すぎると、せっかくの愛用品が少し不自然に見えてしまいます。
そのため、見た目の美しさと実用性のバランスを取りながら、自然に仕上げることを大切にしています。修理は目立たないほど良い、という場面もありますが、今回はそれに加えて“きちんと直した安心感”も感じられる仕上がりを目指しました。
こんな症状はご相談ください
以下のような症状がある靴は、早めのご相談がおすすめです。
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ヒール部分の樹脂が割れている。
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ソールが剥がれてきた。
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加水分解で表面がボロボロしている。
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ニューバランスやスニーカーのかかとが不安定。
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ウォーキングシューズ修理を検討している。
症状が軽いうちであれば、修理の選択肢も広がります。
逆に、崩れが大きく進むと作業工程が増え、場合によっては修理が難しくなることもあります。気になる箇所があれば、早めにご相談いただくのがおすすめです。

まとめ
今回は、三重県のO様よりご依頼いただいたニューバランス574のヒールカップ修理をご紹介しました。
加水分解で傷んだ樹脂製ヒールカップを、本革のオリジナル代用品に置き換え、八方ミシンで縫い直し、ソールを再接着し、内部からビス止めで補強。見た目の美しさと耐久性の両方を高めた修理になりました。
靴修理は、壊れたから終わりではありません。
適切な方法を選べば、愛用の一足はまだまだ活躍できます。
ニューバランスのヒールカップ交換、スニーカー修理、ウォーキングシューズ修理、加水分解によるトラブルでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。大切な靴を、これからも気持ちよく履き続けられるようお手伝いします。
